総選挙勝利 学習交流集会
私鉄 「連帯する会」

講師 脇寺敏男

総選挙勝利 学習交流集会


脇寺敏男 私鉄「連帯する会」 元全国代表世話人

 比例を軸に850万、15%で政権交代実現を   
 野党共闘と労働組合運動・政党支持のあり方
 政治の話を広範に拡げよう


 
この文書は、2021年8月31日に大阪市内で行われた総選挙勝利学習交流集会(主催・日本共産党関西私鉄労働者後援会)で、私鉄「連帯する会」元全国代表世話人の脇寺敏男さんが行った講演を再録、加筆、修正したものです。
 昨年の10月31日総選挙結果前の公園ですが、訴える内容として私たち、私鉄「連帯する会」としてこれからの選挙に対する姿勢や野党共闘と政党支持・労働組合運動やコロナ対策という点では、貴重な資料と判断し掲載させていただきます。
                        (文責 私鉄「連帯する会」事務局)


はじめに

 今日はコロナ過での集会ということで、この集会を準備された方は大変だったと思います。ご苦労様です。
 私鉄「連帯する会」の全国交流集会が二度にわたり中止となり、みなさんとは二年ぶりにお会いできるということで、私自身も非常に楽しみにしておりました。
 今日の学習会は、総選挙が目前に迫っている情勢のもとで、私たちが実際に明日から活動に取り組めるような学習会にしたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 総選挙については10月に入ったら即、選挙ということになります。工事まで1ヶ月余りしかないということを知っておいて下さい。

横浜市長選、東京都議選、国政補選、野党共闘の5連勝
 この間、横浜の市長選挙が行われて、野党共闘の候補者の得票数が50万票、相手陣営の自民党小此木さんが32万票で18万さという大差での勝利となりました。もともと横浜では自民党の基礎票が50万、公明党が20万といわれ、本来なら(基礎票が)70万票あり、自民党は「絶対勝てる」という安心感があったようですが、思わぬ大差がついてしまいました。
 その横浜市長選挙前の7月4日には東京都議選が行われ、その結果は、日本共産党が18から19議席に、立憲民主党が7から15議席へと躍進しました。そして4月25日に実施された北海道、長野、広島の三つの国政補欠選挙ではすべての野党統一候補が勝利し、野党共闘が5連勝したことになります。

野党共闘の現状
 そして、東京都議選が勝利したときに立憲民主党の安住淳国会対策委員長は「京都の成果が如実に出た」と言って、野党共闘を評価するコメントを出しています。
 しかし、その一方でで、同じ立憲民主党の福山哲郎幹事長は「連合を大事にしなければならない」として、立憲民主党の中で「共産党との共闘」と「連合の共闘」、二つの意見があることを明らかにしました。無理にそういう構図をつくって野党共闘の話を先延ばしにしているのかわかりませんが、いまだに(立憲民主党の中では)野党共闘は進んでいません。
 日本共産党は9月8日に中央委員会総会を開催しますが、おそらくそのときには、具体的な野党共闘の形を示すことができると思います。もし、それができなかったら、逆に「野党は共闘でモタモタしているじゃないか!こんな野党に政権を任せていいのか!」という攻撃がされると思います。私は、9月の中頃までには、野党共闘のあらかじめの形を(有権者に)示しておく必要があると思いますが、立憲民主党は「なかなか踏ん切りをつけられないのでは?」とも思っています。
 横浜市長選でも野党統一候補の山中さんが当選しました。立憲民主党は山中さんを推薦しましたが、山中さんが「他の政党には推薦を求めない」と意思表示したため、日本共産党も社民党も自主支援の形をとりました。それを「来るべき総選挙のヒナ型に・・・」と立憲民主党の江田憲司代表代行が言っていますが、これは「共産党はゴチャゴチャ言わずに、言われた通り応援だけすればいいんだ」という江田さんの考えの表れです。この発言に対して、ただちに日本共産党の小池晃書記局長が「共闘の信義に反する」と反論しました。要するに「野党共闘が、今のところ前進してない」というのが現状ではないかなと思います。
 野党共闘については後ほど詳しく述べたいと思います。

自民党政権ではコロナは克服できない
 今度の総選挙でいちばんの争点は何かと言えば、新型コロナ感染症に対しての政府の対応です。
 菅首相は「(コロナ過の暗闇に)明かりが見えた」と8月25日の記者会見で発言しましたが、なぜ、こんな(感染爆発と言われている)ときに明かりが見えるのか、誰が考えてもおかしい。記者会見でも、そこを突っ込まれていましたが「ちょっと異常ではないか?」ともおもえます。
 例えば、みなさんが今年の10月の全国交流集会を決めたのは7月でしたね。5月の第4波以後、東京の1日当たりの新規感染者数は6月1日では471人、大阪は201人です。この数字だけを見れば「いよいよコロナは終息するな」と思えますが、8月28日の新規感染者数は、東京3581人、大阪2641人、6月の10倍です。しかし、この数字見ても、菅さんは「明かりが見えた」と言う。おかしな話です。誰が見てもたいへんな時期ですよ。
 そういう点でも、政府としてコロナ問題にキチッと対策を出しておく必要があります。そして、1日あたりの全国の新規感染者数は、6月1日で1786人、8月28日は2万2751人、これも10倍以上です。いま新型コロナ感染拡大が地方にどんどん広がっています。ですから、菅さんのやり方ではダメだということが徐々に明らかになってきています。
 そのうえ、菅さんは「日本(コロナ対策)は、まだ、うまくいっている。イギリスでは10万人の死者を出したが、日本はまだ1万5千人だ」と言っています。人に命を軽んじるような人がいま総理大臣をしているんです。たとえ一人でも二人でも亡くしたら、政府としては重大なことだととらえて、死者をなくす努力をしなければならないのに「イギリスに比べたら大丈夫、うまくいっている」と死者の数を比べる発言、これは優生思想に通じるように感じます。漫画家の小林よしのりさんなどの極右の人が「日本はまだ、外国に比べて感染者が少ないし、死者も少ない」と言っていましたが、最近は言わなくなっています。極右の人が言わなくなったのに、菅さんだけがそういうことを言いつづける。ちょっと、私たちの常識からケタ外れの首相だと思います。
 もし比べるんだったら、あの東日本大震災での被害死者数と比較すべきだと、私は思います。東日本大震災では1万5900人の方が無くなりました。しかし、昨日までのコロナによる死者の数は1万6000人を越えています。東日本大震災の死者の数を超えているんですよ。それで「イギリスに比べて・・・」としか言えない首相、これには国民こぞって怒るべきだと思います。
 また、菅さんのメッセージは国民には、全然、伝わってきていません。第一に6月の通常国会が終わってから国会を開いていません。国会を開けばいくらでも国民にメッセージを伝える機会があるのに開かない。国民には会食自粛を言いながら政治家が会食している。8月11日、自民党・二階幹事長や公明党・公明党の石井幹事長ら5人が会食したことをマスコミに突っ込まれたら「いや、あれは黙食だった」の苦し紛れの言い訳。国民は「なんやね!」と言いたくなります。そういういい加減なことしか言えない彼らでは、国民へのメッセージは伝わらないのは当然だと思います。そんなことですから、何度、政府が緊急事態宣言を出したとしてもコロナ対策の効き目がないんです。私たちはそこを見ておく必要があるとおもいます。
 100年前、世界的パンデミックとしてスペイン風邪がありましたが、いま、生きている人にすれば、文字通り(このコロナ対策などは)初めて経験することです。
 もう一つは、コロナ感染が増え、家庭内でも家族のあり方、夫婦のあり方も変化しています。この2年間、みんながずっと家に閉じこもりきっりですから「いつもやったら、お父さんはパチンコに行って家にいてくれなかったのに、最近はよく家ににいてくれる」ので、「家族がすごく仲良くなった」「バラバラの家族が一緒にご飯食べるようになった」という話が聞こえてきます。また反対に、これは共産党の市会議員さんに聞いた話ですが、支持者の家庭を訪問し、その家の奥さんを日本共産党に入ってもらおうと話したら、奥さんが「うちの旦那を共産党に入れてほしい」との返答。「何でですか?」と訊くと「朝起きてた時から晩寝るまで、主人がずっと横にいるんで、血圧が上がって息が詰まりそうになるから・・・」(笑)など、さまざまな変化が起きています。このように、私たちとしても、これからは、家庭でどうやって過ごしていくかが大切で、そのためにも社会全体を見直すことが重要であり、そのためには科学的な根拠がいります。
 それでは、菅さんはなぜコロナ対策に失敗したのか?第一は科学を無視する政治姿勢です。「大規模なPCR検査をしたら陽性患者が増えて病院がパンクする。だから検査をしない」という姿勢です。さらにGoTotoトラベルに対しては多くの専門家が当初から「感染が広がるのは人流だ」と言っていました。先日は、パラリンピックでも引率の先生が感染したという報道が示すように、人が動いたら感染の危険性が高まります。それでも、菅自公政権はGoToトラベルを1ヶ月前倒しで実施しました。これも旅行業界の会長が二階さんですから、自民党内で実施の前倒しに何の反論もできなかった。
 第二は、先ほども触れましたが、国民に説明しない、国会を開かないんです。説明する機会を自ら閉じる。そして、すべて担当大臣に丸投げしている。これでは国民にメッセージは伝わるはずがありません。
 そして第三は、コロナ対策への自己責任論の持ち込みです。究極は自宅待機です。「中等症では病院に入れないから、自宅で療養して下さい」これは医療崩壊ですよ。「いったい日本はどうなっているのか!」と専門家の方々も怒っています。
 小学生に「患者さんが増えてベッドが足りなくなりました。どうしたらいいですか?」と問題出したら、「ベッドを増やしたらいい、病院を増やしたらいい」とすべての小学生が算数で応えるでしょう。でも、菅さんの答えは違います。菅さんは「じゃぁ、自宅で療養して下さい」と、とにかくチグハグで命の軽視何です。
 第四はオリンピックの強行開催です。国立競技場の周りでは入場できない多くの人が写真撮影などで殺到して大混雑になっています。このような気の抜けたようなことをやっているから、いくら国民にメッセージを出したとしても効果はありません。

コロナ過を終息させるために
 今日、参加されているみなさんはワクチン接種を済ましていらっしゃいますか?まだ、1回も打ってない人はいらっしゃいますか?若い人はまだ打っていらっしゃらないのかな。そうですね。新聞やテレビでいろいろ言われていますが、ワクチンを打った方が打たないよりコロナにかかる率、重症化する率は低いようです。では、どうすれば、このコロナ過を終息させることができるのか?
 第一は、ワクチン接種を迅速に広範に実施することです。
 ワクチンが足りないとか、異物が混入しているとか不手際ばかりです。ワクチンがいくら入荷していくら使用したかなど、足し算と引き算ができていない。きっちりとワクチン接種を実施する能力が必要です。
 第二に、大規模なPCR検査です。
 検査をすることで陽性反応の患者さんを見つけ出して隔離する。そのことによって感染拡大を防いでいく。
 日本でワクチン接種が2回済んだ人は44%で、未接種は赤ちゃんも入れて7000万人ほど、実際は6000万人程度がまだワクチン接種を受けていません。そこに感染者が広がる恐れがありますので、なるべく早く陽性者を探し出して隔離しなければ、コロナの新規感染者はなくなりません。
 第三が十分な補償です。
 先日、大阪市福島区の松本病院が経営破綻したという報道がありました。ここは24時間の救急医療にも対応する地域の中核病院ですが、今年の1月から大阪府の要請を受けて新型コロナの患者を受け入れることで、外来患者の受け入れを断ることを余儀なくされました。通常、ケガや症状にもよりますが、一人の看護師で10人の患者さんを診る。ですから、コロナ過の状態では医師も看護師も多く必要になります。その(マンパワーの確保)ためにも充分な補償を出すことがいま非常に大事なことですが、国の対応にはそのことがまったく欠けています。
 第四は、新型コロナ感染症は世界的なパンデミックです。イスラエルやアメリカ、日本でも、「3回目の接種を・・・」と言われ始めていますが、世界全体でワクチン接種がすすまないことにはパンデミックは収まりません。人口の10%以上の人が1回接種した国は世界で140ヵ国ですが、アフリカ大陸で10%以上の人がワクチン接種できているのは4ヶ国しかありません。アフリカには56の国がありますが、52ヵ国ではワクチン接種が全然すすんでないということです。ワクチン接種がすすんでいない国々の人たちが移動することによって、いくら3回のワクチン接種を受けていてもその国に感染症が広がっていくことになります。ですから、拡大を防ぐ対策を世界的にキチッとしない限り、新型コロナ感染症の収束は見えてきません。

今度の総選挙、菅内閣と維新の悪政を忘れない
 新型コロナ感染症拡大の問題を争点に「遅くとも10月末には選挙がある」と言われています。菅自公政権が去年の9月に発足してちょうど1年になります。昨日の毎日新聞では「菅内閣の支持最低26%危険水域へ」と書いています。ただ26%だ内閣支持率が低いことは確かですが、各政党の支持率だと自民党の支持率があまり下がっていません。自民と公明の支持率が合計29%あります。それに対する野党の支持率の合計は18%です。野党が事項に負けているんです。
 ただ毎日新聞の調査で、「次の選挙ではどの政党に投票しますか?」の問いでは、自公が28%野党が25%と拮抗していて、37%の人たちが「まだ決めてない」と回答しています。
 私たちが大いに運動すれば逆転する可能性があるという、本当に拮抗した情勢にあることを知っていただきたいと思います。今度の総選挙はコロナの問題と、菅さんがこの1年間でどいう政治をしてきたかということをキチッと顕彰する選挙にしなければなりません。
 一昨日行われた池田市長選挙では、維新候補が勝っています。やっぱり強いですね。「班維新の勢力(得票の合計)が維新勢力(得票)よりも多かった」と、負け惜しみのようなことを言っているところがあるようですが、それなら、なぜ班維新で候補者を統一しなかったのか、を有権者に説明すべきです。いろいろな問題があっても、班維新で合致していっしょにやらなければ、なかなか勝てないことが実証された形です。
 しかし、維新の新型コロナのやり方は、自公政治よりもっとひどいものです。住吉市民病院の廃止や、病床の削減を強引にすすめながら、いま、吉村大阪府知事は「野戦病院をつくる」と明言しています。しかしその裏では、「病床が足らないのは、コロナ対策に協力してくれる病院と、協力してくれない病院があるからだ」と言って、病院同士を対立させて言い逃れをしています。
 でも、この重症病床の不足問題では菅さんも維新と大きな違いはありません。菅さんも「公的病院統廃合」で病床を減らし、減らした病院には消費税から補助金を回す。いま、みんながコロナで苦しんでいるときに、こういうことをやろうとしている。そして75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を倍にしようとする。また、国民投票法の強行。さらに、あまり議論になっていませんが、土地利用規制法の強行です。これは「土地の売買には届けが必要であり好き勝手に売買できない」という法律で、対象は基地の周辺1km以内となっていますが、この法律は基地の周辺だけでは収まるものではありません。国会での政府答弁では、「原発」「空港」そして「鉄道」も監視体制になるとしています。こうなれば大変です。国は私権制限で何でも好きなことができます。まして沖縄では、基地が本島の18%を占めています。沖縄本島で土地を売買する場合には、ほとんどの土地がこの法律に引っかかってしまいます。まさに「私権制限だ」ということを見ておく必要があると思います。

労働組合は野党共闘に積極的に踏み込もう
 それでは、今度の選挙で相手側がもっとも恐れていつのは何でしょうか?
自民党や権力側が恐れているのは、日本共産党でも立憲民主党でもありません。野党共闘なのです。野党の共闘が恐いんです。ですから相手側は野党共闘をたたきつぶすために、さまざまな画策をしてくることが予想されます。
 4年前、公示直前に前原誠二さんの民進党が小池百合子さんの希望の党に合流して野党共闘をつぶしにかかったことは、みなさんの記憶にあると思います。この動きに対して「野党共闘をつぶしてはならない」と日本共産党が多くの候補者を降ろして、何とか野党共闘を急造しましたが、今回も相手側は野党共闘を黙って見過ごすことは無いと思います。例えば、相手側は野党共闘つぶしを画策して、その影響で、ある野党では国会議員の半分が党を離れる可能性があります。その野党共闘つぶしに負けない共闘を、各野党がキチッと事前に作っておくことが必要です。
 今でも「野党共闘は野合だ。基本政策が違うのに、いっしょになるのはおかしい」という野党共闘つぶしの攻撃が報道されていますが「基本政策が違うから共闘がある」のです。基本政策がいっしょだったら一つの政党になりますね。この種の攻撃は、これからはもっと出てきますので、よくつかんでおいてほしいと思います。
 立憲民主党と日本共産党とは共闘に対しての考え方が、ちょっと違うと思います。「日本共産党は単独で政権を取るという考えはない」んです。統一戦線の政府をめざしており、日本共産党と他の政党や他の団体といっしょに政府をつくるという考え方です。立憲民主党や国民民主党は「政権は単独でとる」としていますが、ここが大きな違いです。日本共産党は「政権に入る、入らない」よりも共闘を前に進めようとしていますが、なかなか前にも行っていないようにも見えます。しかし私自身は「立憲民主党も国民民主党も、よくここまで日本共産党と付き合ってきているな」とも思っています。
 立憲民主党は昔の社会党の流れをくんでいますし、国民民主党は民社党の流れをくんでいます。労働組合でも連合をひとくくりにする見方もありますが、連合という運動体の中には二つの流れがあります。旧総評系の流れと旧同盟系の流れです。これらを含めて日本共産党といろいろ議論していますが、「よくここまで引っ張ってきているなと」と思います。
 その原動力は、やっぱり、市民のみなさんの「共闘を願う力」だと思います。山口二郎さんや中野先生がいらっしゃいますが、市民のみなさんのがんばりが、本来ならいっしょに運動できない政党もいっしょうに引っ張ってきてくれている。こういう人たちともいっしょにたたかわなければ勝てないのです。ここがいちばん難しいところです。
 どういう結果になるか分かりませんが、水面下ではそういう話はすすんでいると思います。
 私は「野党共闘に関してもっとも遅れているのが労働組合だ」と思っています。なかなか、連合も全労連もいっしょに運動をすすめられていません。そこにいちばんの問題があるのではないかなと思います。
 特に全労連が本当に頼りないと思います。みなさんのお手元にお配りしている資料をご覧ください。全労連の前議長の小田川義和さんが、2016年の私鉄「連帯する会」の全国交流集会(岡山集会)の記念講演で、私たちに「参議院選挙で、例えば、青森県では民進党公認の候補者を立てましたが、野党統一です『(民進党以外の)自分たちも関与してつくりだした統一候補だ」という自負もあります。従って青森県労連は民進党公認の候補者を推薦しました。私たちは、当時「推薦までするのは早すぎる』と考えていましたが、いまでは『もっと前へ進まなければならない』と個人的には思っています」と発言されています。全労連の議長が『個人的』と言っている。ここに、いまの全労連が置かれている現実があります。
 そして、今年の「月刊全労連6月号」で全労連の小畑雅子議長(全教出身)が「2019年の参議院選において、要求実現運動を展開する中で、市民と野党の統一候補の擁立を図って、擁立した統一候補の当選をめざして奮闘すること。特に統一候補の擁立と対応については、地方の特徴や特性、運動の可変性を踏まえることを基本として対応してきた。この結果、推薦を行った組織は10組織、支持決定をした組織は6組織、支援は6組織」と述べています。「全労連の中で野党統一候補を応援する県労連と応援しない県労連ががありました」という中身を書いているんです。
 今回の総選挙では、こういうことではなくて、全労連は労働組合として踏み込んで選挙闘争に関わってほしいと思います。
 今年の4月25日、北海道、長野、広島の補欠選挙がありました。北海道では「立憲民主党の候補者を、国民民主党、日本共産党、社民党、労働団体では道労連、連合北海道、市民団体では戦争をさせない市民の風北海道が一致して支援し、たたかいを繰り広げた」(月刊全労連6月号小畑議長論文)と道労連は統一候補を応援しています。
 長野県では、「県労連が加わる信州市民アクッションと立憲民主党の政策協定が成立して、統一候補としてのたたかいが繰り広げられたので、県労連が組合員に配布した信州アクッションの政策ビラは、選挙で大きな力を発揮した(同論文)
 広島県でも、「県労連が労働者の要求に基づいた公開質問を各候補者に届けて、その回答と、「選挙に行こう」の呼びかけを組合員に届ける取り組みが旺盛に行われた(同論文)としています。
 この野党統一候補を応援したことを全労連の機関紙に掲載しているということは「今度の総選挙では、推薦や支持やいろんな形や力関係もあるけれども、とにかく一歩前に出て応援しなさいよ」ということを、全労連の中央は訴えているんですね。
 大阪労連も中央の要請に応えて欲しいのですが、大阪労連は今年度の運動方針に「市民と野党の共闘での政権交代を後押しし、要求実現を可能にする」としています。「なんで後押しやねん!」と私は言いたい。
 私が10年前に労連と関わっていたときは、労連側は「野党統一の候補者でも特定政党の支持になるから応援できない」と言っていました。でも、よく考えてほしいのは、連合が結成され、また全労連が結成されて31年になります。全労連が結成されたときに労働組合の原則として『資本からの独立』『政党からの独立』『一致する要求での共闘』を掲げました。これは正しいことですが、当時は市民との共闘の候補者と言う状況は一切ありませんでした。市民と野党共闘統一候補者というのができたたのは6年前ですか、これは、新たな状況の中での共闘のそしきなんです。
 それに対して大阪労連は共闘に踏み込みませんでした。大阪労連が「特定の候補者は支持しない」ということは、「労働組合が選挙活動をしない」ということになってしまいます。以前は、阪急でも労働組合が特定政党支持を表明すると、私は寺北さんらと一緒に「憲法違反だ、けしからん、こんな決定は取り止めよ」と申し入れました。しかし、いまはむしろ「野党共闘の候補者への支援を一生懸命がんばれ」と労働組合を激励しなければならないときだと思います。
 比例区の選挙は政党を選ぶ選挙ですから、日本共産党であり、立憲民主党などなんですが、小選挙区選挙をたたかいながら『野党共闘を推進する政党を労働組合として応援する』よう声を上げることが大事だと思います。
 労働組合が特定政党支持問題を持ち出してしまうと、老組合として比例区選挙をいっさいたたかわないことになってしまいます。去年のことですが、私が担当している全労連の職場では、ビラがいっさい入っていないし、ポスターも貼ってありません。昔の私鉄の職場なら、特定政党支持問題に対して、多くの活動かが「それはおかしいだろ!」と、職場で労組役委員とケンカしながらも日本共産党の応援をしていました。しかし、いまは、そんな迫力のある活動家は職場にはいません。だから、その職場は選挙の運動期間であっても何もしない、無風です。まぁ、ちょっと言い過ぎですが、実際に大阪労連は47都道府県の県労連と比べてみても、消極的ではないかと見えてしまいます。
 一昨年、小田川義和さんと対談した(京都市内・交流誌第35号参照)ときに、私は「今の状況で、「野党共闘の候補者は特定政党の候補者と規定する」のは、結局『何もしない』という方針になる」と、小田川さんに訴えました。
 労働分野で野党共闘の候補者を支援すると決めたら、ポスターもビラも入れさせてもらい
職場に貼りだします。先日、連合職場の組合員に「選挙で誰に投票しましたか?」と訊きますと、「立憲民主党の候補者に入れました」という答えが返ってきました。そして「何で?」と訊き返すと「職場にビラやポスターがあったから・・・」と答えてくれました。「労働組合が推薦しているから・・・」とかは関係ないようです。労働組合は頼りないけど、労働組合は必要だと思っている。だから職場にポスターやビラ、名前があったから入れたようです。ですから、職場にポスターやビラを置いておくことは非常にだいじなことではないかなと思います。この面でも、全労連が意志統一して取り組みを強める必要があると思います。
 今度の総選挙は本当に歴史的な選挙です。政権交代の選挙なんですが、いままで私たちはそういうことを選挙戦で言った事はありません。参議院で政権交代は出来ませんが、衆議院では野党が過半数議席を獲れば政権交代ができるんです。だから、4年前、相手側は土壇場で前原さんを使って野党共闘つぶしの攻撃をしたんです。
 ある野党では、所属議員の半分くらいは「野党共闘の政治よりも自民党政治を引き継ぐ方がいい」と考えている人がいます。今回もそういう流れ(野党共闘つぶし)があることも想定されますから、気をつけて見ておく必要があると思います。
 みなさんの中にも大阪労連や県労連の下部組織の年金者組合に加入されている方がいらっしゃると思います。もし入っていらっしゃられたら「労働組合は野党共闘を支援すべきだ」と、声を上げてほしいと思います。労働組合ががんばらなければ、そして労働者ががんばらなければ、政権交代はできないんですから。
 労働組合は、全体の17%の労働者しか組織していませんが、そこで働く非正規労働者は3倍います。そういう人たちに影響をあたえるためには、やはり、労働組合が踏み込まなければならないことを十分知っておいていただきたいと思います。

さまざまな分野で前向きの希望ある変化
 そういう中で可能性はどうなのか?さまざまな分野で前向きの大きな希望ある変化があります。
 先ほど「阪急民報」をいただきましたが、その中で会社がこのコロナ過で接遇教育を実施することに対して、「小さな教室に何人も集めてなぜ実施するのか?去年は新型コロナの影響で中止したではないか」と書いています。昨年と比べて10倍の感染者が出ているのに教育を実施する会社上層部は、菅さんと変わらないですね。阪急民報の問いに会社側は答えを窮するでしょう。労働組合は、この問いに「会社に申し入れをする」と、職場に答えるという変化があります。
 また社会的な変化としては、ジェンダー平等の問題があります。東京オリ・パラ組織委員会会長の森喜朗さんが「女の人が入った会議は長引く」という発言をして、社会的な猛反発を受けて辞任に追い込まれました。この発言、3〜4年前だったら、こんな大きな問題にはならなかったと思います。
 ある雑誌の投稿欄に「私の長年の友人が『お宅の旦那、元気にしているの?』と聞いたので、『うちには旦那はおりません、』ジェンダー平等から見てもおかしいよ、と諭すと、友人は『旦那』とは言わなくなった」という投書がありました。私は、投稿者の方が友人から「あの人はうるさい人やからモノ言うたらアカン」と思われていると思います。ジェンダー平等には努力は必要ですが、個人に注意することだけはなく社会と共に人間が変わらなければならないため時間がかかります。急いだら軋轢(あつれき)になると思います。落ち着いてゆっくり変えていくことが大事ではないかと思います。
 それと、生理の貧困の問題です。最近「トイレに生理用品を配置してほしい」という声が広がり、実施しているところもあるようです。私自身も、まったくそういうことは頭になかったけれど、日本共産党発行の月刊誌「女性のひろば」を読んでいると「男に比べて、たいへんな苦労を背負って、本当に苦労をしながら活動をしてきたんだな」と、女性の悩みがよくわかるようになりました。
 国民が声を上げれば政治は変わります。その最もたる例えが、35人学級の実現です。長期間にわたる教員と保護者の要求でしたが、少人数学級化がすすみました。
 暮らしと権利の問題について言うと、あるユーチューバーが「生活保護のために税金を払っているのではない」「ホームレスの人の命はどうでもよい」「生活保護の人に食わせる金があるなら猫を救ってほしい」など、人権を無視する無茶苦茶なことを発信していることが報道されました。これも先ほど述べた優生思想につながっているように思えますし、菅さんの「命の軽視」という考え方につながっているのではないでしょうか。この発言に、すぐさま社会的な反発が起こりました。政府も「生活保護は権利だから、受け取ってほしい」と、初めて言わざるを得なくなりました。これも国民の声だと思います。バッシングがあれば押し返すという国民の変化だと思います。

支持を訴えて情勢を掴もう
 国際的な変化では、核兵器禁止条約の発効ではないでしょうか?この条約は、核兵器を持つことは違法、犯罪であるということを国連で決めたものです。日本でも、世界でも「声を上げれば、徐々に変わっていく」時代だということです。そういう意味でも、今度の選挙は社会を変える最大のチャンスだととらえて頂きたいと思います。
 関西でも9月12日まで緊急事態宣言がつづきますが、私はみなさんに訴えたい。みなさんが、10人のお知り合いに、今日お話させていただいた「今の情勢を話して支持を訴えてほし」と思います。その話をすることによって、情勢の変化や厳しい状況など、今日お話した内容をみなさん自身がさらにつかめると思います。
 いま、近畿ブロックでは衆議院議員は2人です。1つの職場であと7人支持を増やしていたら3人になっていました。300人増やしていたら4人当選でした。ですから「あと1人」「あと1人」とがんばれば、近畿ブロックで4人当選させることができます。
 東京都議選でもそのようなところがありました。そこで支持を訴えてがんばっておられた方は「あぁ、あの人にも頼んでおけばよかった」と悔やんでいらっしゃると思います。
 野党共闘の選挙になったら必ず接戦の選挙になるでしょう。各職場でも後援会のみなさんががんばっていると思います。この間、パナソニックで門前宣伝したら、珍しく4人から労働相談がありました。連合職場でも、職制の人と「お近づき」になり、協力するようになっています。これは、普段から人間的なつながりがあり、その延長線上で対話があったからなのです。そういう変化を起こさせる情勢で、それをつかむにはとにかく、野党統一候補の支持を訴えてほしい、そうすれば、変化を十分つかみ取ることができると思います。
 みんなで政権交代に向けて全力でがんばることを訴えて、私が用意した話を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(長く大きな拍手)