青野篤さんの講演


  自民党政権が続くなか、以前から海外派兵に向けた集団的自衛権や海外から批判を受けても参拝を続ける靖国神社参拝問題、第二期安倍内閣になってこれが謙虚に現れ、今度は憲法96条の改憲から九条を取り払う特定秘密保護法を提案してくるなど、国民の民意とかけ離れた悪法を次から次へと出してくる。
 そんな中別府九条の会主催の「特定秘密保護法」といかに闘うかと題して、大分大学経済学部准教授の青野 篤さんの講演会が別府ニューライフプラザで行われたので参加してきました。
 講演の骨子は
 @ 大臣ら行政機関の長が日本の安全保障に関する情報のうち特に秘匿の必要性のあるものを「特定秘密」   に指定。範囲は防衛、外交特定有害活動(スパイ行為など)、テロ防止、自衛隊に関する全てや公安警   察に関する全てを秘密にすることが出来る
 A 指定の有効期間は原則5年で、行政機関の長の判断で5年以上延長が可能、また内閣の承認を条件に6   0年まで延長を可能、例外として武器・弾薬や政令で決める重要な情報は60年超過も可能。なぜ60   年なのかと言えば、今日秘密として決めた情報は60年後には誰も生きている当時の閣僚はいないとの   判断で、その時の秘密をうやむやにすることが出来るとのことで、誰も責任を負うことが無いようにと   の配慮らしい。
 B 行政機関の長は秘密を扱うものに「適正評価」を実施する。
 C 国民の知る権利の保障に資する報道・取材の自由に十分な配慮。となっているがこの条文はあまり意味   が無い
 D 秘密を扱う物が漏えいした場合、最長懲役10年。漏洩をそそのかした場合は最長懲役5年。この懲役   期間は何処から来たかと言えば、現在アメリカの秘密保護法の懲役が10年と5年となっているのでそ   れに合わせただけ
 E 公布は2013年12月13日から1年以内に施行。となっている。
 青野さんはこの骨子に基づいて安倍内閣が進めようとしている内容を次のように
 (1) 法案審議手続きの非民主性と異常性・・両院での拙速審議と廃案・継続審議を求める声を無視して強    行採決。石破幹事長はデモをテロ行為と本質は同じや報道抑制発言など反対世論を敵視
 (2) 人権やけんぽうの基本原理をことごとく破壊しかねない法律の中身で知る権利の大幅な制限と民主主    義・国民主権の危機・・広すぎる秘密指定の範囲・秘密は限定するのではなくすべて包摂・政府が安    全保障とみなす全て・原発は秘密ではないが原発の警備体制は秘密と言うように国民が監視やチェッ    クすることは不可能
 (3) 刑事手続き上の諸権利・諸原則の侵害・・秘密保護法の秘密は何が秘密で何が秘密か?それが秘密で    、秘密保護法で検挙されても何の秘密条項で検挙されたのか判らないまま有罪判決を受ける。例えば    裁判官も何の秘密漏えいで裁判しているのか聞くこともできず(聞けば秘密そそのかしで裁判官が有    罪になる)政府の言うがままに有罪判決を下すことになり、裁かれる当事者も何が秘密漏えいにあた    ったのか判らないままに有罪判決を受ける人権侵害が横行する。
 (4) 適正評価制度によるプライバシーの侵害と内部告発者の排除・・プライバシーについてはテロリズム    との関係、犯罪履歴、懲戒履歴、情報の取り扱いに関する非行歴、薬物の乱用・影響、精神疾患、飲    酒についての節度、信用状態、経済状態、同居人、家族等ありとあらゆる個人に関する情報を提供。
 (5) 三権分立の崩壊・・秘密が国会や裁判所も覆う・・国会に設けられた秘密会が安全保障に著しく支障    を及ぼすと判断すれば国会に提供されず、その秘密を知った国会議員がその秘密を洩らせば懲役刑と    なるため、国政調査権・議員活動の大幅な制限を受けることになる、裁判官も秘密を洩らせば懲役刑    に
 (6) 秘密保護法には色々な制度・新組織を設置するが、秘密と言う名において機能する組織は無い・・保    全監視委員会・独立交文書監理監・情報保全監察官・情報保全諮問会議などが新組織として7名で発    足するが、この中には秘密保護法に反対している人は一人の弁護士だけで官僚が好きなように判断す    る為なんら意味を持たないものになっている。
 (7) 特定日持つ保護法のねらい・・立法事実なき法制定、現在の秘密を保護すると言うよりも今後新しい    秘密を次々作って公務員・報道機関・市民の威嚇し委縮させる。漏洩者に対して処罰したあとどうす    るかについては秘密保護法の法律には規定は無い。
 (8) 官僚による情報の独占と官僚支配の確立・・行政機関の長は現実には判断できないし、チェックもで    きない。政治家は適正評価の対象外のため情報は政治家には渡されず役人レベルでストップしてしま    う。
 (9) 公安警察の権力拡大・・1980年代の国家秘密法は防衛とそれに関するものだけだったが、今回は    警察情報が特定秘密とされ公安警察・警察情報の格上げによって戦前の内務所復活に繋がっている。
 (10)戦争遂行体制の構築・・秘密は戦争の始まり、厳罰によって情報統制を行い国民から判断材料を奪い    、自らの有利な情報だけを出す。この手法は戦前の軍機保護法・国防保安法・大本営発表と大きく重    なる。
 (11)特定秘密保護法の施行阻止・廃止に向けて・・施行は公布から1年なので集会や廃止活動の継続し世    論に訴えていくと同時に秘密保護法の制定に反対する政党と手を組み反対集会や署名活動、デモ活動    などを行い、施行されたとしても、たえず運用を監視し、不当な運用には声をあげて、情報公開法・    憲法を活用して闘う。民主主義は死んだわけではない、現憲法が生きている限り、特定秘密保護法は    弱点を抱え続ける。(憲法に規定されている表現の自由・知る権利・集会・デモの自由・国会議員の    免責特権・公開裁判の原則等の矛盾)
 以上の内容を約1時間半にわたって、秘密保護法の危険性や廃止に追い込むことが出来る手立てを判りやすく講演していただいた。大変良い勉強・学習が出来ました。