豊後大野市能場会館
第34回御嶽流神楽大会



 コロナ感染症が下火となったなか、感染症対策を充分にとっての第34回御嶽流神楽大会が豊後大野市清川町にある能場神楽会館にて開催されたので行ってきました。
 当日は衆議院選挙の投票日と重なっていたが、期日前投票で投票を済ませ、久しぶりの神楽観賞と秋の農作業を中止して会場に着いて見ると、場内は観客で一杯となており、観賞場所としては二段目の箇所が良いのだが、入る余地はなく1段目に2人分のスペースが開いてたのでシートを敷いて観賞するも、雨上がりで強い陽射しを受けるすり鉢会場は蒸し暑く団扇がほしいぐらいでした。
 当日は神楽大会とあって出演神楽社は6団体の神楽社で、何時もならもう少し多いのだが、やはりコロナ過のためかやや少ないように見える、大会のプログラムを見ると観客と一体になって、観客席まで飛び出てきて楽しく執り行われる演目もコロナ過のためかこれも無く、舞台の上で華やかな衣装をまとって静かに舞う舞と激しく舞う舞に分かれた演目が多かったが、それでも神楽好きにとっては楽しい舞でした。ただ残念なのは、神楽開始時間が8:30分からと朝早く、私のように遠く別府やその他の地域からの人にとってはとても無理で、私が到着したときは第3演目が終了した9:30分でした。特に私が見たかったのはプログラムの「清川子供神楽保存会」の舞でした。
 出演した神楽保存会の団体「緒方三社神楽保存会」「坂井迫神明社神楽座」「清川子供神楽保存会」「竹の中神楽保存会」「御嶽神楽」「庄内神楽保存会」の6団体


 第四演目 竹の中神楽保存会の「太平楽」 天照大神から三種の神器を授かり瓊瓊杵尊が諸神を引き連れて、猿田彦命の先導で中津国に天孫降臨され、大きな事業を無事成し遂げられたので、天下太平を謳歌して楽しみ合うと言う舞です。4人の舞手が四方の神に写真のような動作を行うだけの単純な舞です。




神々の登場
4人による舞が始まる





四方の一つの舞が終わるごとに一礼
四方を周るように優雅に舞う
舞が終わり引き上げる体制で一列に


私が会場についたときの観客、陽射しが暑いので上の木陰にもたくさんの人がいる。

 第五演目 御嶽神楽の「貴見城」 貴見城とは海幸彦と山幸彦が互いの猟具を交換して禍福を得ようとしたが、山幸彦が兄の海幸彦と交換した釣り針を魚に取られ、叱責を受けている所に海神の助けによって釣り針を探し出し、海神宮(貴見城)と山の栄誉を得ると言う舞だが、これはゆっくりとした優雅な舞と激しい舞が混同した舞です。




海幸彦と山幸彦の登場
続いて他の神々も






続いて現れた諸神も登場
海幸彦と山幸彦と他の神々4人と諸神が四方に移動しながら舞い始める






海幸彦と山幸彦達が引き上げる
諸神だけが激しく舞い始める



 第六演目 庄内原神楽保存会の「日割」 日割とは古代中国から易経の中から取題したもので、庄内神楽独特の舞です。1年を360余日、東を記の神、南を火の神西を金の神、北を水の神、中央を土の神の五柱の神に分け、春を木の神、夏を火の神、秋を金の神、冬を水の神に分け、最後に各季節から18日を分かち、計72日を土曜として土の神に与え、四季を五等分に日割すると言う暦作りの舞です。



舞が終わり引き上げる体制
神々の登場






四柱の神登場
右中央に日割神が鎮座






土の神登場
日割神が四柱神に日割を読み上げる






土の神が日割日数を不服として抵抗する






なお日数に抵抗する土の神
日数に日割神がいさめる



 第七演目 緒方三社神楽保存会の「平国」
平国とは伊邪那岐尊が自分の子供を切った時に太刀先より飛び散った血が石の上に飛び流れ、磐裂神・根裂神・磐筒男神・岩筒女神の四神が生まれたと言う神話の舞です。


神々が引き上げる
四神の登場



四方の神に同じ所作の舞を奉納する単調な舞です


 第八演目 御嶽神楽の「天孫降臨」 天孫降臨とは邇邇芸命が天児屋命をはじめ、布刀玉命、天宇受売命、恩金神、天手力男神を従え、猿田彦神を先導して天下りし、携える物は天照大御神が自分と思って祀れと仰せ、邇邇芸命はこれらを奉じて日向高千穂の峯に降臨したと言う物語の舞です。


舞が終わり引き上げる
先導神の登場






四神の登場 どの衣装がどの神になるのか分からない






左端の神が邇邇芸命 姫神の左が猿田彦命  全神が揃う  右の猿田彦命が無事降臨を祝う



 第九演目 竹の中神楽保存会の「大蛇退治」 大蛇退治とは高ま原を追放された須佐之男命が出雲の国簸の川の上流で八岐の大蛇を退治して櫛稲田姫を助け八重雲を切り払い新居の住居に八重垣を造ると言う物語で、足名椎、手名椎の謂れは手足となって働くと言う意味と櫛名田姫の櫛は魔よけの霊議と水田を生み出すと言う議と言われています。


舞が終わり引き上げる
櫛名田姫、足名椎、手名椎の登場






舞を終えて須佐之男命を待つ
須佐之男命の登場
須佐之男命の舞が始まる






須佐之男命
手名椎
櫛名田姫






足名椎
櫛名田姫の舞






須佐之男命が酒樽を持ってくる
八岐大蛇が火を噴きながら登場
酒樽を横目で見る






酒を飲み眠る
須佐之男命が眠りを確かめる仕草






須佐之男命が大蛇への攻め手を探る  一撃を加えると






またも火を噴きだす
大蛇の反撃
大蛇の首を刎ねる






腹を裂いていく  中から草薙の剣が出てくる  草薙の剣を振りかざして大蛇倒したことを示す

 第10演目 坂井迫神明社神楽座の「天皇遣」 天候遣とは天照大御神は大国主命に葦原の中つ国を譲らせるため、建御雷神と経津主神を派遣し、二人が出雲のの国に下りて十握剣を抜き、剣を逆さまに波の上に立て、その剣先に胡坐をかいて座り、威勢を示して大国主神と談判をすると、大国主神は我が子の事代主神と相談し、天上界にこのくにを譲ることにしたと言う物語で、舞の最後に大国主神が「チャル」と言う道化師に変身してユーモアたっぷりに観客を笑わせる動作が面白く人気がある。




建御雷神と経津主神の登場
大国主神の登場






左から大国主神、建御雷神、経津主神
諸神の登場
諸神だけの舞が始まる






観客席で舞の真似をする子供たち
道化師になったチャルの登場
チャルが茶目っ気に観客と遊ぶ



 第11演目 庄内原神楽保存会の「貴見城」
貴見城とは火闌降命(海幸彦)と彦火々出見命(山の幸彦)兄弟の物語で、第5演目で紹介した内容の舞です。


諸神が終いの舞を激しく舞う
火闌降命(海幸彦)の登場


お昼ごろの観客、人数は朝より少し増えたように見えるが・・・






彦火々出見命(山の幸彦)と諸神の登場
これより舞台を周りながら四方にて同じ舞を繰り返していく単純な舞が始まる






舞と物語を結び付けにくい舞が続く
諸神だけの舞に変わる



 第12演目 御嶽神楽の「八雲払」 八雲払いとは第9演目で紹介した通りの八岐大蛇を退治する内容ですが、御嶽神楽の大蛇退治は大蛇を俵に見立て、その俵を真剣にてずたずたに斬り裂くと言うもので、斬る動作を何度も繰り返し観客をイライラさせると同時に引き付けると言う所作が素晴らしく、首を切り落としたときには会場から大きな拍手がわくほどです。
 物語の内容は第9演目と同じです。

舞を終えて引き上げていく
手名椎、足名椎、稲田姫の登場



足名椎
手名椎
稲田姫



須佐之男命が登場
須佐之男命
三人の嘆きを聞く須佐之男命





須佐之男命に嫁ぐ稲田姫の舞
八岐大蛇に見立てた俵
大蛇の寝息を覗う須佐之男命






俵を斬りやすいように尻尾への綱を斬る
同じ所作を繰り返す
最後の一刀を振り落とす






首が斬られた瞬間
俵にあった首と尻尾を切り落とし、俵に剣を突き刺す。下には斬り落とされた尻尾が散乱
 





第13演目 御嶽神楽の「大神」 大神とは神前に対して無事に神楽を奉納したことを感謝し、天下泰平を祝う舞納の舞だが、別府まで帰る時間を考え観賞を割愛して帰路についた。
演目はこれで終了、楽しい一日でした。



俵から取り出した草薙の剣をかざす



最後に俵を切り刻みもみ殻が散乱